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目次
父 寺田洋祐の俳画(寺田 和弘)
寺田洋祐 略歴
◆蕪村
春
1 一軒の茶見世の柳老ひにけり
2 鶯の枝ふみはづすはつねかな
3 うすぎぬに君が朧や峨眉の月
4 春雨や人住みてけぶり壁を洩る
5 春雨にぬれつゝ屋根の毬哉
6 春雨やものがたりゆく蓑と傘
7 帰る雁田ごとの月の曇る夜に
8 なつかしや津守の里や田にしあへ
夏
1 宵宵の雨に音なし杜若
2 さみだれや名なき川のおそろしき
3 戸を明て蚊帳に蓮のあるじかな
4 学問は尻からぬけるほたる哉
5 でゞむしの住みはてし宿やうつせ貝
6 酒を煮る家の女房ちよとほれた
秋
1 後の月鴫たつ後の水の中
2 庵の月主を問へば芋掘に
3 書つゞる師の鼻赤き夜寒哉
4 うつくしや野分の後のとうがらし
5 小路行けばちかく聞ゆるきぬた哉
6 茸狩や頭を挙れば峰の月
7 秋の暮去年より又淋しくて
8 さびしさのうれしくもあり秋のくれ
冬
1 古傘の婆裟と月夜のしぐれ哉
2 時雨るや我も古人の夜に似たる
3 そば刈りて居るや我行道のはた
4 埋火や我かくれ家も雪の中
5 炭うりに鏡見せたる女かな
6 我が庵に火箸を角や蝸牛
7 冬川や舟に菜を洗ふ女有
8 暮まだき星のかゞやくかれの哉
◆一茶
春
1 初空へさし出す獅子の首哉
2 門々の下駄の泥より春立ぬ
3 正月の待遠しさも昔哉
4 古郷や餅につき込む春の雪
5 春風に箸を摑んで寝る子哉
6 ぼたもちや地蔵のひざも春の風
7 おさなごや尿やりながら梅の花
8 我春も上々吉よ梅の花
9 我を見てにがい顔する蛙かな
10 ぬかるみに尻もちつくなでかい蝶
11 蝶とぶや横明りなる流し元
12 門の蝶子がはへばとびはへばとぶ
13 里しんとしてづんづと凧上がりけり
14 なの花の中を浅間のけぶりかな
15 山吹や先御先へととぶ蛙
16 有様は我も花より団子哉
17 花の陰あかの他人はなかりけり
18 ちる花や已におのれも下り坂
19 死支度致せ致せと桜哉
20 ゆさゆさと春が行くぞよのべの草
夏
1 ざぶざぶと白壁洗ふわか葉かな
2 としとへば片手出す子や更衣
3 藪竹や親の真似してつん曲る
4 夕飯の膳の際より青田哉
5 しなのぢや山の上にも田植笠
6 もたいなや昼寝して聞く田うゑ唄
7 足もとへいつ来たりしよかたつむり
8 さくさくと飯くふ上をとぶ蛍
9 孤の我は光らぬ蛍かな
10 べらぼうに日の長いかな暑いかな
11 手に足におきどころなき暑さ哉
12 暑き夜や子に踏せたる足のうら
13 涼風の曲りくねって来たりけり
14 我庵や小川をかりて冷し瓜
15 人来たら蛙になれよ冷し瓜
16 青すだれ白衣の美人通ふ見ゆ
17 松島の松にしてみる扇かな
18 夏の雲朝からだるう見えにけり
19 田の人よ御免候へ昼寝蚊屋
20 塗り盆に猫の寝にけり夏座敷
秋
1 秋立や雨ふり花のけろけろと
2 露ちるやむさい此世に用なしと
3 【こおろぎ】のふいと乗りけり茄子馬
4 その草はむしりのこすぞきりぎりす
5 寝返りをするぞそこのけきりぎりす
6 小便の身ぶるひ笑へきりぎりす
7 秋蝉の終の敷寝の一葉かな
8 雁よ雁いくつのとしから旅をした
9 しなのじやそばの白さもぞっとする
10 くやしくも熟柿仲間の坐につきぬ
11 栗おちて一ツ一ツに夜の更る
12 栗拾ひねんねんころり云ながら
13 誰にやるくりや地蔵の手の平に
14 我庵は江戸のたつみぞむら尾花
15 秋の日や山は狐の娵入り雨
16 なけなしの歯をゆるがしぬ秋の風
17 牛の子が旅に立つ也秋の雨
18 秋の夜やしやうじの穴が笛を吹
19 垣外へ屁を捨てに出る夜寒哉
20 たばこ盆足で尋る夜寒哉
冬
1 大根ひき大根で道を教えけり
2 早だちのかぶせてくれし蒲団哉
3 朝晴にぱちぱち炭のきげんかな
4 あれ小雪さあ元日ぞ元日ぞ
5 思ふ人の側へ割込む炬燵哉
6 山寺や雪の底なる鐘の声
7 栃餅や天狗の子どもなど並ぶ
8 あこが餅あこが餅とて並べけり
9 餅のでる槌がほしさよ年の暮
10 羽生へて銭がとぶ也としの暮
寺田洋祐氏の俳画(玉城 司)