向田邦子の末尾文トランプ

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向田邦子の短編小説と『父の詫び状』所収エッセイから末尾文を引用し、しめくくりの意図を解説。読者に「カタルシス」を感じさせると評価の高い、向田邦子の末尾文がこの一冊で凝縮して味わえる。


著者 半沢幹一 著
カテゴリー 新典社新書
判型 新書判並製
ISBN 978-4-7879-6180-8
商品コード: 9784787961808 商品カテゴリー:

目次

はじめに

《小説編》
*写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった。(かわうそ)
*庄治は坂の途中で立ち止り、指先でポケットの小銭を探した。(だらだら坂)
*江口はゆっくりと水を飲んだ。(はめ殺し窓)
*ただの縁起かつぎかな、と思いながら半沢も負けずに肉にかぶりついた。(三枚肉)
*ノックはまだ続いている。(マンハッタン)
*人と人の間から、おやこ三人、折り重なるように眠りこけ、ずり落ちそうな不似合いなほど大きいカメラをしっかり押さえているカッちゃんの手が見えた。(犬小屋)
*麻は、ネクタイをほどきながら茶の間へ入ってゆく夫を突きとばすようにして先に飛び込むと、掘りごたつの上に置いてある手鏡と毛抜きをあわてて隠した。(男眉)
*空を見上げて、昼の月が出ていたら戻ろうと思い、見上げようとして、もし出ていなかったらと不安になって、汗ばむのもかまわず歩き続けた。(大根の月)
*時子はそれからゆっくりとりんごの皮を噛んだ。(りんごの皮)
*この店にはもうひとつ、捨てなくてはならないものがある。(酸っぱい家族)
*そのあと、なんと続けるか、水枕でしびれた頭は、歳月と一緒にことばも凍りついてしまった。(耳)
*隣りから、テレビの「君が代」が流れて来た。(花の名前)
*おぞましさとなつかしさが一緒にきて、塩沢は絶えかけていた香をくべ、新しい線香に火をつけた。(ダウト)
*守は、もう一度そっと鮒を突ついて水の中に沈めてやると、
「ワン!」
犬の吠えるまねをした。(鮒)
*「ああ」
とうめいて、痛そうに顔をしかめた。(ビリケン)
*勝手口から、威勢のいい牛乳屋の声がした。(三角波)
*もうすこしで涙がこぼれそうになった。(嘘つき卵)
*しかし、信号が青にかわり、二つの車はどんどん離れて遠くなっていった。(隣りの女)
*黙って上り、数夫とならんで朝まで眠りたかった。(幸福)
*頭の地肌にピタリとくっついたお河童は、子供の頃、絵本で見た桃太郎とそっくりであった。(胡桃の部屋)
*もうすぐドアがあく。(下駄)
*「さようなら!」
自分でもびっくりするくらい大きな声だった。(春が来た)

《エッセイ編》
*それが父の詫び状であった。(父の詫び状)
*いたずら小僧に算盤で殴られ、四ツ玉の形にへこんでいた弟の頭も、母の着物に赤いしみをつけてしまった妹の目尻も、いまは思い出のほかには、何も残っていないのである。(身体髪膚)
*隣りの神様を拝むのに、七年もかかってしまった。(隣りの神様)
*写さなかったカメラのせいか、バッグが行きよりも重いように思えた。(記念写真)
*自分が育て上げたものに頭を下げるということは、つまり人が老いるという避けがたいことだと判っていても、子供としてはなんとも切ないものがあるのだ。(お辞儀)
*だが、キリスト教の雑誌にはこういう下世話なことを書くのもきまりが悪く、枚数も短いことだから、その次の次ぐらいに浮かんだ思い出の「愛」の景色を書くことにした。(子供たちの夜)
*中でもひとつをといわれると、どういうわけかあのいささかきまりの悪い思いをした磯浜の、細長い海が、私にとって、一番なつかしい海ということになるのである。(細長い海)
*釣針の「カエリ」のように、楽しいだけではなく、甘い中に苦みがあり、しょっぱい涙の味がして、もうひとつ生き死ににかかわりのあったこのふたつの「ごはん」が、どうしても思い出にひっかかってくるのである。(ごはん)
*そう考えると、猿芝居の新春顔見世公演「忠臣蔵」も、まさに私というオッチョコチョイで、喜劇的な個性にふさわしい出逢いであった。(お軽勘平)
*こんな小さなことも、一日延しに延して、はっきり判るまでに桃太郎の昔から数えると四十年が経っているのである。(あだ桜)
*今、ここに書いたのは、そんな中で心に残る何人かの車中の紳士方のエピソードである。(車中の皆様)
*これが私のお盆であり、送り火迎え火なのである。(ねずみ花火)
*上つがたに知り合いのあろう筈もなく、伺ってみたことはないが、いつか何かの間違いでお目通りを許される機会があったら、そのへんの機微などお伺いしたいものだと思っている。(チーコとグランデ)
*ご出世なさいますよ、と保証して下さった京都の仲居さんには申しわけないが、このていたらくでは見たて違いというほかはなさそうである。(海苔巻の端っこ)
*この文章を書くまで忘れていたが、私が現在住んでいるマンションは、二十五年前に腰を下ろした表参道の場所から百メートルと離れていない。(学生アイス)
*この人にとって、俳聖芭蕉のもののあわれは、わが足許なのである。(魚の目は泪)
*私は目をつぶってアメリカの家庭料理の匂いをご馳走になっているのである。(隣りの匂い)
*そして澤地女史のアマゾン・ダイヤのきらめきも欠かすことができない思い出のひとこまなのである。(兎と亀)
*ハイドンの「おもちゃの交響楽」にならって、わが「お八つの交響楽」を作れたらどんなに楽しかろうと思うのだが、私はおたまじゃくしがまるで駄目なのである。(お八つの時間)
*その代り拾ったものは、人の情けにしろ知識にしろ、猫ババしても誰も何ともおっしゃらないのである。(わが拾遺集)
*だから私は、母に子供の頃食べたうどん粉カレーを作ってよ、などと決していわないことにしている。(昔カレー)
*わが生涯で、はじめて壺を選んだ、幼い目が詰まっているのである。(鼻筋紳士録)
*ところで、鹿児島へは行ってみたい気持半分、行くのが惜しい気持半分で、あれ以来、まだ一度も行かずにいる。(薩摩揚)
*私の掌が小さかったのだ。(卵とわたし)
*「父の詫び状」は、そのまま「母への詫び状」になってしまった。(あとがき)

おわりに

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